スーダン:ダルフール紛争巡り、大統領に逮捕状 現職の国家元首で初--国際刑事裁
【ブリュッセル福島良典】スーダン西部ダルフール地方の紛争を巡り、国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)は4日、戦争犯罪と人道に対する罪の容疑でバシル・スーダン大統領(65)の逮捕状を発行した。国家指導者らの重大犯罪を裁くICCの設立(02年)以来、現職国家元首への逮捕状発行は初めて。スーダン政府は反発を強めており、駐留する国連平和維持活動(PKO)部隊への民兵らの妨害行為が懸念される。
ICCのモレノオカンポ主任検察官は昨年7月、集団殺害、人道に対する罪、戦争犯罪を犯した容疑でバシル大統領の逮捕状を請求した。ICC予審裁判部は4日、「元首であれ訴追免責はない」として「多数の市民の殺害、レイプ、強制移住などを指揮した」大統領の間接責任を指弾した。集団殺害については「特定集団掃滅の意図を確認できなかった」と除外した。
スーダンはICCに加盟していないが、国連安保理決議でICCに付託された事件のため、協力義務がある。だが、スーダン政府は07年に逮捕状が出された閣僚と民兵組織指導者の引き渡しも拒んでおり、ICC報道官は、スーダン政府が協力拒否を続ければ「判事は問題を安保理に送付する」と警告した。
ICCは警察力を持たず、バシル大統領の逮捕はPKOの任務外のため、大統領が国内にとどまる限り逮捕状が執行される可能性は低い。ICC加盟国(108カ国)には、大統領が入国すれば、逮捕し、ICCに移送する義務が生じる。
ICC報道官は、「ICCは政治法廷」とのバシル大統領陣営の批判に対して、「純然たる司法機関だ」と反論。逮捕状発行がダルフール和平協議に悪影響を及ぼすとのアラブ・アフリカ諸国の懸念については「正義なしには永続的な平和はない」と強調した。
バシル大統領は1989年に軍事クーデターで政権を握り、イスラム化を推進した。
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■ことば
◇ダルフール紛争
スーダン西部ダルフール地方の開発の遅れに不満を抱く黒人住民らが、アラブ系の中央政府に対し03年に武装蜂起。政府は民兵を利用して無差別襲撃を行うなど紛争が激化した。国連推計では、これまでに30万人が死亡、250万人が難民・国内避難民となり、「史上最悪の人道危機」と呼ばれる。中国がスーダンで進める石油開発が、政府側の資金源になっているとの批判がある。
http://mainichi.jp/select/world/news/20090305ddm007030140000c.html
スーダン大統領に逮捕状 国際刑事裁判所、ダルフール紛争で
国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)は4日、スーダン西部ダルフールの紛争を巡る「人道に反する罪」および「戦争犯罪」で同国のバシル大統領に逮捕状を出したと発表した。現職の国家元首にICCが逮捕状を出す初のケース。ダルフール和平に大きな影響が及ぶのは確実。アラブ、アフリカ諸国やロシアが反発するなど波紋が広がっている。
決定を発表したICC報道官は「大統領がダルフールの殺人や拷問、性的暴行などを意図的に行うよう間接的に指示した疑いがある」と述べた。訴因として5件の「人道に反する罪」と2件の「戦争犯罪」を挙げた。逮捕状を請求したICC検察官が求めた「ジェノサイド(大量虐殺)」は含まれなかった。
ICCはスーダン政府に大統領の身柄引き渡しを求めた。スーダン大統領顧問は「新しい植民地主義だ」と述べ、拒否する立場を表明した。現地からの報道によると首都ハルツームでは多数の民衆が大統領支持のデモに参加している。(ウィーン=岐部秀光)(04日 22:50)
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090304AT2M0402D04032009.html