2008年8月25日月曜日

米メディアは北京五輪から大統領選へ様変わり

米メディアは北京五輪から大統領選へ様変わり
2008/08/25

すでにメディアは大統領選へシフト・チェンジ マジシャンのデイヴィッド・カッパーフィールドでさえうらやむようなスピードで、アメリカのテレビから中国がこつ然とその姿を消そうとしている。

 「2年に1度の地理のお勉強」と呼ばれた北京オリンピック。さまざまな出来事が重なり、例年より特別なオリンピックと見られていた北京だが、その撤退はかなり極端なものになりそうだ。

 中国の人権問題をめぐる歴史は、開幕が近づくにつれ話題となっていった。米テレビ局のABCは“Primetime: Crime”を休止し、ゴシップ好きなニュース雑誌もキャスターのボブ・ウッドラフ(イラクで爆撃にあったにもかかわらず奇跡の再起をとげた中国に詳しいジャーナリスト)に誌面を分けた。また、NBC Newsの大半(“Today”と“Nightly News”を含む)も、北京に大移動した。

 本国が大統領選の真っただ中であっても、行方不明人への関心は根強く、経費削減のプレッシャーは連日テレビと新聞紙上をにぎわせている。

 Pew Research Center(世界的なシンクタンク)のプロジェクト・フォー・エクセレンス・イン・ジャーナリズムは、ケーブル局のトーク番組をこう考察する。「犯罪と芸能人をミックスさせながら、政治と社会問題を取り扱う傾向が高い。これは他のニュース番組でも次第に需要が高まっている」

 しかし、中国とアメリカは経済の面で表裏一体の関係にある。ロシアは近隣国のグルジアに攻め入り、兵士たちは今もイラクとアフガニスタンで戦っている。

 それでも、戦争はおいしいセックス・スキャンダルと並列して報道される。元大統領候補のジョン・エドワーズ民主党議員が不倫を認めたときに、ケーブル局がこれをデモンストレーションしてみせた。民主党にとって“最低の局”と見なされているMSNBCは、視聴者にフォックス・ニュースと錯覚されるほど勢いよくこのネタに飛びついた。

 北京オリンピックの忘却をせかすかのように、興味の対象は民主党対共和党の代表集会に移行する。今後2週間は、ケーブル局のニュース番組も占領されるだろう。そのころには、選挙戦も終盤に差し掛かる。

 未来は予想できないが、紙面の大幅な削減は、新たな事件を誘発している。大手日刊紙が驚くべき数のスタッフを解雇し、海外の情報は信用ならなくなった。同じくPewが発表した最近の調査“The Changing Newsroom”によると、米新聞の3分の2が、海外ニュースを削減したという。

 大きな話題はもちろん取り上げられる。突然の災害、パキスタンの政権交代、イランに対する武力威嚇……。しかしこれらに関心を寄せるのはごく少数で、アメリカ以外の国で起こっている出来事は、簡単に忘れ去られてしまう。だからテレビ局は、セレブのゴシップや政治家の中傷合戦を放送することを選ぶのだ。

 NBCは、オリンピックから大統領選へのバトン・パスに集中している。MSNBCでは大統領選のプロモ映像を流し、その宣伝文句は『アメリカ最高のレースが、いま始まる』というドラマチックなものだ。“最高のレース”とともに、自国中心的でタブロイド誌がつきまとうレースも幕を開けるのだ。

http://www.varietyjapan.com/news/business/2k1u7d00000blf5v.html