2008年6月21日土曜日

スーダン難民:故郷へすがる子どもの瞳…20日、難民の日

スーダン難民:故郷へすがる子どもの瞳…20日、難民の日

母国に到着した子どもの瞳に写った風景は……=スーダン南部ジュバのウエーステーションで2008年6月4日、西村剛撮影 「ここが私の生まれた場所だから。もうどこにも逃げない」。アフリカ北東部のスーダン。約20年間の南北内戦が終結し、壊滅的な被害を受けた南部を中心に国外に逃れた難民や国内避難民の帰還が進んでいる。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などは周辺国の難民キャンプを順次閉鎖し、国際社会の支援は今後、長期的な経済支援に切り替わる。だが、すべてが破壊されたこの国の未来は、約束されたものではない。20日は「世界難民の日」。

 南部・ジュバ郊外にあるUNHCRなどが運営するウエーステーション(帰還の中継地)。人々はここで家の屋根に使うシートや台所用品などの生活道具、当面の食料などを受け取って目的地へ向かう。

 約150キロ離れた隣国ウガンダから帰還民を乗せた2台の大型バスが、砂ぼこりを上げて入ってきた。まる2日間の旅路。人々に疲労の色は隠せなかったが、窓枠を握り締めて見つめる大きな瞳は懐かしい景色をじっととらえていた。

 バナ・フラピアさん(40)。大切に育てた6人の子どもは、内戦の戦火から逃げる途中に全員が死んだ。あれから10年。「長い道のりだったけど、戻って来られて私はまだ幸せ」。夫や、その後キャンプで生まれた4人の子どもと故郷の地に足を踏み下ろした。今、何がしたいか。「何よりも大地に穀物の種をまいて育てたい」。迷わずにそう話した。

 国連の統計によると、国連の支援でこれまでに約28万人の難民が帰還。国内避難民も含めると210万人以上になる。一方、水道、病院、学校など生活基盤は不十分で、スーダンは、多くの課題を抱えながら復興への第一歩を踏み出す。【隅俊之】

 ◇世界子ども救援キャンペーン30年
 毎日新聞社と毎日新聞社会事業団の「世界子ども救援キャンペーン」は30年目を迎えた今年、内戦後の復興モデルとして注目されるスーダン南部と、対照的に忘れられた存在になっている中央アフリカを訪れ、「家路を探して」懸命に生きる人々の姿を報告します。7月中に連載も予定しています。

 ◇スーダン
 エジプト・英国の支配から1956年に独立。北部のアラブ人中心の中央政府と、南部のアフリカ系黒人との間で緊張状態が続き、83年に南北内戦がぼっ発。約50万人の難民と450万人以上の国内避難民を生んだ。西部のダルフール地方でも03年に紛争が激化。20万人以上が死亡、新たに約220万人の難民・国内避難民が発生したとされる。南北内戦では05年に包括的和平合意が成立。暫定の南部スーダン政府が樹立され、11年には南部独立の是非を問う国民投票が予定されている。日本政府はスーダンへのPKO派遣を検討している。

http://mainichi.jp/select/world/news/20080620k0000m030130000c.html