2008年5月30日金曜日

子どもの徴兵、「力の不均衡」が要因(全訳記事)

Q&A:子どもの徴兵、「力の不均衡」が要因(全訳記事)

IPSJapan2008/05/30
ウガンダ、ソマリア、スーダン、コンゴ民主共和国などアフリカ諸国で長年にわたり問題となってきた子どもの徴兵が、アジア、とりわけアフガニスタン、スリランカ、ネパール、ビルマ(ミャンマー)、フィリピンでも深刻化しつつある。






【国連IPS=タリフ・ディーン、5月13日】

 ウガンダ、ソマリア、スーダン、コンゴ民主共和国などアフリカ諸国で長年にわたり問題となってきた子どもの徴兵が、アジア、とりわけアフガニスタン、スリランカ、ネパール、ビルマ(ミャンマー)、フィリピンでも深刻化しつつある。

 国連によれば、子ども兵士の数は世界で25万人を数え、南アジアおよび東南アジアでもかなりの数が認められている。

 アジアにおける強制的徴兵の主な原因は何だろうか。イデオロギーか貧困か、それとも両方か。

 「イデオロギーと貧困の両方が異なった割合で要因となっているが、この問題にはもうひとつの側面がある」と言うのは、紛争に苦しむスリランカで自助、非暴力、平和を基本理念に掲げる同国最大の慈善団体のひとつサルボダヤ運動の事務局長ヴィンヤ・アリヤラトネ博士である。

 博士は、イデオロギーに関して言えば、過激派組織は、子ども世代全体にとどまらず他の世代、すなわち、子どもたちを守りたいために彼らに必ず従属する親たちにも支配力が及ぶと指摘する。

 IPS国連総局長のタリフ・ディーンのインタビューに応えたアリヤラトネ博士は、子どもの徴兵は大人と子どもの力の力学、そして力の不均衡を映し出す一例と考えられると述べた。

 政治的目的を正当化するための「イデオロギー」はこの不均衡な力の教育における口実かもしれない、と東京に本部を置く「子どものための宗教者ネットワーク(GNRC)」の南アジア地域コーディネーターも務めるアリヤラトネ博士は言う。

 彼は、徴兵は他の形態の虐待のなによりも子どもの生活に広い影響を及ぼすと指摘する。

 なぜなら、力を行使して子どもを徴用する大人たちは、暴力によって権威を得ているのであり、子どもたちは、自らと最愛の人々の命を脅かす彼らの強力な権力を前に抵抗する力もないからだ。

 「多くの場合、子どもたちはこうした力の行使に従わざるを得ず、報復行動を受けることなしに抵抗できるような強い立場にはない」と、博士は述べた。

 さらに、子どもたちを保護するべき国の機関や制度も崩壊し、国家のシステムへの国民の信頼が失われたとき、事態はさらに悪化する、と言い添えた。

 アリヤラトネ博士とのインタビューの抜粋を紹介する。

IPS:世界各地、とりわけスリランカの子どもの窮状を緩和するのに、宗教や倫理教育はどのような役割を果たすことができるでしょうか。サルボダヤ運動はどのような役割を果たしてきましたか。

VA:子どもたちの目に見える明白な外面的貧困には、物理的ニーズを満たすことで対処できますが、それより懸念されるのは、スリランカの多くの子どもたちが抱えている内面的な心の貧困です。それは隠れていて目に見えず、はるかに深刻です。こうした子どもたちは、人生の目的や目指すべきものもなく、その苦難に挫折、自己憐憫、怒り、憎しみを抱えながら生きています。

 こうした否定的な心のうちを表に出すことはなかなかありません。しかしこうした感情は永遠に潜んでいるものでもありません。心に抑えていた感情がいつか急に現れることがあるでしょう。大体スリランカの子どもたちには、手本となる大人がいません。父親が存命で、一緒に暮らしていたとしても、子どもたち、特に男の子はその存在を身近に感じていません。家庭内暴力やアルコール依存症が蔓延しています。子どもたちは、導き指導してくれる大人を切望しています。

 さまざまな形態の虐待を受けている世界中の子どもたちと同じように、スリランカの子どもたちも大きな弾力性と勇気を身を以て示しています。彼らは困難な状況を脱する能力を備えています。

 そうした状況のなかで子どもたちが安心して健全に育つことができるよう、どのような手助けができるでしょうか。これこそが、精神性、宗教、倫理教育が大きな役割を果たすことのできる点ではないでしょうか。サルボダヤは、統合的なアプローチで子どもの発育と福祉に取り組んできました。私たちは、子どもがまだお母さんの胎内にいる時からプログラムを開始しています。赤ちゃんの誕生を待つお母さんとお父さんを対象に、胎児と精神的なつながりを築けるよう瞑想のプログラムを提供しています。

 また、就学児だけでなく未就学児を対象とするプログラムも行っています。全国各地5,000カ所以上の幼児発達センターの運営を支援しています。精神的、道徳的、文化的価値観は、帰属する宗教の基本的教えの実践が奨励される子どもの心理社会的発達や身体の発達に不可欠な要素です。

 そしてGNRCを通じて、私たちは児童書を作り、あるいは子どもキャンプを実施してさまざまな宗教や民族に属する子どもたちの相互理解と協調のために努めてきました。また、大人のためのプログラムにも取り組んでいます。ますます困窮し、深刻化する現状のなかで、子どもたちを手助けする大人が「不屈の精神」を養っていくことが必要です。泥中の蓮のように華を咲かせることを子どもたちが学ぶことができるよう、私たちは手助けしなければなりません。

IPS:広島で開かれるGNRCのフォーラムの意義についてはいかがでしょうか。フォーラムは、世界の子どものためにさらに多くのことを行うよう国際社会に呼びかける警鐘となるでしょうか。

VA:広島で開かれるGNRCフォーラム(5月24~26日)は、強い精神的な基盤を持って子どもとともに、子どものために献身的に活動するさまざまなグループが集うとても重要なイベントとなると確信しています

 国内外を問わず活動するとき、私たちは世界中の子どもたちのためにより多くのことをしようと努めます。子どもたちは大人に「施し」を期待することはありません。私たち大人に課せられた課題は、子どもたちの視点で子どもたちの希望と野心を、痛みと苦しみを、そしてニーズを理解できる心を備えることです。大人の私たちが子どもによかろうと思うことを提供することではありません。

 そのためには、利己的な温情主義的・家父長的意識を捨て、謙虚な気持ちで子どもたちの真の苦境に心をそわせることが必要です。子どもとともに活動することは、大人にとって愛すること、許すこと、心優しくあること、思いやりがあること、冷静であることの自らの能力を試し、評価する貴重な機会となるものです。

 大人は、サービスを届ける単なる経路であってはなりません。どのようなことを行うにしても、大人と子どもの関係を深く、意義ある信頼に足るものにすることに貢献するものでなければなりません。大人がこのような自身の心の変革を成し遂げることができれば、より効果的に行動して、子どもたちの苦悩を軽減し、子どもたちに将来への希望を与えることのできる新しい道が数多く開かれるでしょう。

 広島フォーラムは、教訓と成功と希望のストーリーを提供するでしょう。心の変革をもたらす重要な転換点となり、子どもを思いやる新たなメッセージを全世界に送るものとなると思います。(原文へ)

http://www.news.janjan.jp/world/0805/0805288211/1.php