中東和平交渉 粘り強く入植凍結迫れ
2009年9月25日
国連人権理事会が先のイスラエル軍のパレスチナ自治区ガザ攻撃を「戦争犯罪」とし、国際刑事裁判所への付託を求めたいとする見解を出した。停滞する中東和平の推進材料の一つにしたい。
問題とされたガザ紛争は、昨年暮れから三週間で、千三百人ものパレスチナ人が死亡、イスラエルの死者は兵士含めわずか十三人とされ、世界から非難が集中した。
国連人権理事会の見解は、特にイスラエル軍が住民約百人に銃を突きつけて、一軒の家に集めて砲撃、子供を含む三十人が死亡したのは「明らかに市民に向けられた」とし、「国際人道法に違反した戦争犯罪」と指摘。人体に触れると高温で燃え続け、死に至らせる白リン弾については「市街地で無差別に使用した」とした。
イスラエルはガザからのロケット弾攻撃に対する防衛を攻撃理由としてきた。人権理事会は、ガザを支配するイスラム原理主義組織ハマスによる、この継続的攻撃についてもイスラエル同様「戦争犯罪」に当たると非難した。
イスラエルの攻撃については、安保理に対しイスラエルに責任者の訴追を求め、応じなければ安保理として国際刑事裁判所(ICC)の検察官に付託すべきだと言及した。これは異例の厳しさであり、それほど非人道的な攻撃行為だったと解釈すべきだろう。
ICCは、スーダンのバシル大統領にダルフール紛争をめぐり逮捕状を出したことがある。効力は疑問視されもするが、中東紛争でイスラエル側に訴追の可能性が向けられた意味は小さくない。
中東和平では、二〇〇三年にロードマップ(行程表)ができたが、米国のテロとの戦いに便乗したかのようなシャロン元イスラエル首相の強硬姿勢で頓挫。ガザ紛争後に右派のネタニヤフ政権が誕生、交渉の糸口すら消えたため「二国家共存」を掲げたオバマ米政権の仲介に期待が集まっていた。
ただパレスチナ側が交渉再開の条件として、将来の「領土」と願うヨルダン川西岸での入植活動の全面凍結を挙げているのに対し、イスラエルは住宅二千五百戸の建設続行、東エルサレムでの建設も強行しようとしている。
オバマ大統領は、ネタニヤフ首相、アッバス自治政府議長との初の三者会談を実現させたが、イスラエルの譲歩は引き出せなかった。入植凍結は容易にはのませ難い。だが今回の国連側指摘も追い風に譲歩を迫り続けてほしい。
http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2009092502000041.html