2009年1月4日日曜日

安保理常任理事国入り渇望する日本 分担金の見返り要求は逆効果

安保理常任理事国入り渇望する日本 分担金の見返り要求は逆効果

2009年1月1日から日本は国連安全保障理事会(安保理)の非常任理事国を務める。任期は2年。非常任理事国に選ばれたのは10回目で最多。日本は、安保理の改革を求め続け、外交政策の大目標である常任理事国の地位を確保しようと再び活発に働きかけるだろう。だが、成算は不透明であり、難しい外交を迫られる。

 ■分析

 日本が国連安保理改革の野心をもってから久しい。だが、特に熱心に常任理事国の席を求めるようになったのは05年以降だ。日本の努力は、国連創設60周年という機会をとらえたものだった。「2005年世界サミット成果文書」が採択され、国連総会に安保理改革に関する作業部会が作られた。日本は、安保理改革の議論で、いわゆる「4カ国グループ(G4)」の一員として活動した。G4は、日本、ドイツ、インド、ブラジルからなる。G4提案は拒否権を持つ常任理事国を6カ国増やし、G4とアフリカ2カ国を新常任理事国にしようとするものだ。

 ◆軍事貢献は限定的

 安保理改革提案と常任理事国入りの要求は、さまざまな主張を根拠にしている。第1に、現在の国連安保理の構造は第二次世界大戦直後と冷戦期の古い構造を反映している。安保理は主に国家間紛争に対処するように作られており、テロ、破綻(はたん)国家、大量破壊兵器の拡散といった問題に取り組むために新しい参加者を必要としていると日本は強調している。

 第2は、公平性の問題だ。日本は国連予算の約20%を負担しており、米国に次いで第2位の拠出国だ。1980年代と90年代の米国と違い、分担金を期日に支払っており、事実上、最大の拠出国といえる。財政的責任にはより強い発言権を伴わなければ不公平だというのが日本の立場だ。

 第3に、日本は国連憲章の旧敵国条項を不快に思っている。同条項を削除し、大国の地位にふさわしい常任理事国の資格を手に入れたいと考えている。

 しかし、G4案には多くの難点がある。安保理改革には国連憲章の改正が必要だが、そのためには国連総会で全加盟国の3分の2以上が賛成し、すべての常任理事国を含む全加盟国の3分の2以上が批准する必要がある。G4は国連最大グループであるアフリカ諸国を当てにしているが、アフリカ諸国はG4案支持をためらっている。

 また、G4それぞれの隣国、中国と韓国、イタリア、パキスタン、アルゼンチンが反対している。日本は戦術的過ちを犯した。当時の小泉純一郎首相は地域外交と世界外交は切り離せると考えていたが、靖国神社参拝で中国と韓国の反発を招いた。

 米国は日本の常任理事国入りを公式に支持している。06年、ライス米国務長官は「日本は常任理事国になるためのすべての条件を備えている」と述べた。しかし、米国は安保理の全面的な改革を望んでおらず、常任理事国を最大でも2カ国だけ増やす考えであり、他国にG4案を支持しないよう働きかけている。日本は、G4の団結を保つのが難しいという判断に傾いており、米国の改革案を支持するように引き込まれていると感じている。

 1992年以来、日本は、PKO(国連平和維持活動)に参加、アフガニスタンやイラクの「対テロ戦争」も支援しており、安保理常任理事国として完全な役割を果たせると考えている。だが、安保理の授権があっても日本が軍事作戦に貢献できる範囲は限られており、国際社会は日本の常任理事国としての適性に疑問を持っている。現在、PKOに従事する自衛隊員は20人しかいない。

 ◆米は積極支援せず

 日本は、引き続き国際社会に常任理事国入りの支持を訴えている。とくに、決定的に重要なアフリカ諸国の支持を得ようと努力している。スーダンへの自衛隊派遣など、アフリカへの関与を深めており、中国と影響力を競い合っている。

 常任理事国の地位を求める道を歩み始めた以上、後退すれば、日本は敗北を認めることになり、国際的に重要でない国家としての地位を承認したことになる。

 しかし、新常任理事国を選出するG4の計画はほとんど支持を集めていないようにみえる。現在、国連で話し合われているのは非常任理事国を拡大する案だ。

 いまでも米国は日本の後ろ盾だが、積極的に後押ししようとはしていない。

 ■結論

 日本の政策決定者は、もし常任理事国になれないなら、国連分担金を削減するよう求めるかもしれないと示唆した。ここでも日本は国際社会で対等な扱いを受けていないと嘆いている。確かに、日本は「国際の平和および安全を維持する」という国連の理想に多大の努力を投じている。だが、国連安保理改革に「不公平さ」を持ち出すことで、国際社会で「つきあいにくい相手」と見なされる可能性がある。

http://www.business-i.jp/news/special-page/oxford/200901010002o.nwc