2008年11月30日日曜日

平和の恩恵あずかれないスーダンの元女性兵士たち

平和の恩恵あずかれないスーダンの元女性兵士たち


【11月28日 AFP】スーダン南部ジョングレイ(Jonglei)州に暮らすアルアル(Alual Koch)さんが銃を使って人を殺すことを覚えたのは、13歳の時だった。36歳の今、スーダン内戦のゲリラ兵として活動した時期については無表情で振り返るアルアルさんだが、家族を支えるための現在の「闘い」に話が及ぶと、目から涙がこぼれ出す。

 21年に及ぶ内戦が2005年に包括和平合意に達したあと、アルアルさんは看守の職を得た。同じくゲリラ兵だった夫を戦争で失ったアルアルさんは、29人の親類や子どもたちを、500スーダンポンド(約2万1000円)というわずかな月給で養っていかなければならない。

 専門家によると、スーダン南部の女性たちはこの内戦で、戦闘への参加や支援で大きな役割を果たした。だが、彼女らの多大な貢献は無視されがちで、多くの女性たちが「新生スーダン」で置き去りにされていると不満をもらす。 

 小火器に関する調査団体「スモール・アームズ・サーベイ(Small Arms Survey)」は、スーダンの元女性兵士たちは平和の恩恵を受けておらず、売春婦などの「ハイリスクな職業」に就かざるをえない状況に追い込まれていると警鐘を鳴らす。

 また、生計を立てる方法がなく、収入を男性兵士に依存する女性が多いが、女性への性的暴行がかなりの数に上っている。同団体が9月に発表した報告によると、軍がレイプ禁止令を出し、政府が男女平等を徹底させる政策を打ち出しているものの、効果はほとんど上がっていないという。

 報告は「民族や部族的背景にかかわらず、戦後の社会的地位は元女性兵士たちが最も低い」と指摘した。

■「自由のために戦ったのに、まだ学べる機会さえない」

 1983年に内戦の口火が切られ、大きな戦渦を被った同州の州都ボル(Bor)は、インフラや保健衛生が世界最悪の水準にとどまったままだ。この地では、女性は結婚が決まると牛と交換されるなど「モノ」として扱われるほど地位が低く、彼女たちにとって生活は特に厳しい。

 2006年の政府統計では、スーダンの女性の識字率は男性の3分の1に過ぎず、12%と極端に低かった。また、女性の17%が15歳までに結婚する。

 ボルでは最近、女性への暴力撤廃を訴え、100人規模のデモ行進が行われた。内戦時に兵士だったという49歳の女性は「自由のために戦ったのに、いまだに学校で学べる機会さえない。不公平だ」と憤る。政府は若年者の教育には熱心だが、成人した女性には男性ほど教育の機会が与えられていないとの不満も多い。

 内戦終結時、国連は元ゲリラ兵18万人の市民生活復帰支援に4億3000万ドル(約400億円)を拠出した。元女性兵士も支援の対象だが、看護師や料理人、ポーター、慰安婦など、戦闘の「脇役」だった女性たちは対象にならないだろうとも、専門家らは指摘する。(c)AFP/Peter Martell

http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2543128/3558777