2008年7月29日火曜日

北京五輪/中国は主催国の品格示せ

北京五輪/中国は主催国の品格示せ
 八月八日の北京五輪が近づいてきた。開会式には福田康夫首相、ブッシュ米大統領、プーチン・ロシア首相、サルコジ仏大統領ら外国の元首、王室メンバーら八十人超が出席する。中国政府は五輪を中華民族の百年来の夢をかなえ、国威を発揚させる一大イベントととらえ、その成功に国家の威信を懸けている。だが、前途は多難だ。

問われている統治能力
 安全な「平和の祭典」の開催は主催国の最低限の義務であるが、このところ各地で破壊活動が頻発しており、国家の統治能力が問われかねない状況だ。
 中国での五輪開催が決まったのは、中国政府が「開催は人権問題の改善につながる」と約束したからだ。従って、治安を理由に抑圧を強化すれば、国際公約違反であり、五輪は逆に中国の対外イメージと威信を傷つけることになろう。中国が国際社会と共存できる主催国としての品格を示すことを期待する。

 開催日が近づくとともに、中国が抱える矛盾が噴き出した。雲南省昆明で連続バス爆発事件が起きた。公安当局はテロ組織の関与を否定しているが、新疆ウイグル自治区の分離独立組織が犯行声明を出した。三月のチベット弾圧、七月の広西チワン族自治区での大規模デモに続くものだ。これら少数民族の反乱は、他民族の“中華化”が招いたものとして反省すべきだ。

 各地で地方官僚や警察の腐敗や横暴に抗議する暴動が続発している。貴州省では少女の死亡をめぐり数万人が政府庁舎を焼き打ち。陝西省では警察の検問がもつれて男性が死亡したことで、多数の住民が警察車両に放火した。浙江省では仲間の釈放を求め、出稼ぎ労働者数千人が警察派出所を破壊した。そのほか、土地の強制収容などに抗議する農民のデモが多発している。

 胡錦濤政権は「和諧社会」の名の下、調和のとれた社会を目指している。だが、格差拡大、高まるインフレ、環境汚染、国有企業での大量解雇に加えて、官僚の腐敗や人権抑圧で民衆の間に不満のマグマがたまっている。

 役人と学者が癒着した手抜き工事によって、四川大地震で多くの校舎が倒壊し、子供たちが犠牲になった事件は政治不信を高めた。

 憂慮されるのは、中国政府が民衆の不満を力で抑え込もうとしていることだ。地方官僚の横暴を訴えるために上京した農民たちが住む北京の「直訴村」で一斉拘束が行われた。人権活動家たちが国家転覆罪で有罪とされたりしている。治安を口実にした人権抑圧は許されない。

 報道の自由が守れるかどうかも疑問だ。中国駐在の外国人記者たちは、チベット自治区の取材や陳情者、反政府デモ、人権活動家らへの取材には障壁が設けられていると批判している。

 北京五輪はスーダンのダルフール地方で黒人系住民を殺戮した政府を中国政府が支援したことから「ジェノサイド(大量虐殺)五輪」と批判された。


汚名を残すことにも
 五輪を政府の求心力維持のための偏狭なナショナリズム高揚に利用するなら「第二のベルリン五輪」の汚名を後世に残すことになろう。



http://www.worldtimes.co.jp/syasetu/sh080729.htm