2008年7月28日月曜日

ダルフール 虐殺阻止へ国際圧力を

ダルフール 虐殺阻止へ国際圧力を
2008年7月28日

 スーダンのダルフール紛争をめぐり、国際刑事裁判所(ICC)が同国のバシル大統領の逮捕状を請求した。実際に逮捕されるか不透明だが、大量虐殺阻止へ、国際法廷が動きだした意味は大きい。

 ICCは国際人道法に違反した個人を、裁く意思や能力がない国に代わって裁く国際法廷。二〇〇三年に設置され、現在日本を含む約百カ国が加盟している。

 容疑は大統領指揮下の軍、民兵組織による大量虐殺と「人道に対する罪」、戦争犯罪。判事三人で構成する予審法廷が審理するが、逮捕状請求諾否の結論が出るまでに数カ月はかかりそうだ。

 ダルフール紛争はイスラム教徒同士が土地と水利権をめぐって〇三年から争い、政府軍がアラブ系民族についたため黒人住民が反政府軍を結成、内戦へと発展した。

 国際社会が問題視したのは、政府軍による黒人住民への拷問、レイプを含むジェノサイド(民族大量虐殺)作戦だ。国連推計で約三十万人が犠牲に、また約二百五十万人が難民となったとされ、アフリカ最悪の「ルワンダ悲劇の再来」と憂う声が高まった。

 これまでアフリカ連合(AU)が七千人規模の停戦監視団を派遣していたが、十分に機能しなかった。年末から計二万六千人という史上最大規模のAUと国連の合同平和維持部隊(UNAMID)の展開に切り替わったばかりだ。

 だが、大統領側は部隊受け入れに協力せず、派遣できたのは九千人程度。ダルフールだけでフランス一国に近い広さで軍事対応ができず、政府軍の襲撃にさらされるありさまである。

 そこで安保理は、国家元首であるバシル大統領の訴追をICCに付託したのだが、大統領側はスーダンが未加盟であることを理由に「ICCに訴追の権限はない」と強気だ。昨年五月、人道問題相らに逮捕状が出た時も引き渡しを拒否した。逆に、逮捕状請求に態度を硬化させ、平和維持部隊への妨害行為に出る懸念さえもある。

 しかし、国際社会がダルフールでの国家的犯罪を見逃すわけにはいくまい。これを機に一丸となって圧力をかける時だ。

 ところが中国は、経済的つながりからバシル大統領訴追に対し消極的である。北京五輪の開催を前に、安保理常任理事国である中国に姿勢の転換を求めたい。

 スーダン南部での国連平和維持活動に自衛官派遣を表明した日本も働き掛けを強めるべきだ。
http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2008072802000083.html