2008年7月17日木曜日

スーダン:ダルフール紛争 国連職員が退避開始 大統領逮捕状、PKOに支障も

スーダン:ダルフール紛争 国連職員が退避開始 大統領逮捕状、PKOに支障も
 【ヨハネスブルク高尾具成】スーダンのダルフール紛争をめぐり国際刑事裁判所(ICC)主任検察官が「人道に対する罪」などでバシル・スーダン大統領の逮捕状を請求したことで、ダルフールの国連平和維持活動(PKO)への支障が現実味を帯びてきた。AFP通信によると同地に駐留する国連・アフリカ連合(AU)合同部隊「UNAMID」は15日、スーダン国内で国連への反発が高まっていることを受け、一部の国連職員の退避を開始した。

 UNAMID報道官は「不可欠ではない一部の職員を一時的に移動させるだけ。撤退ではない」と強調。「人道援助活動は続ける」と話した。紛争当事者の合意を前提とする国連平和維持活動にとって、当事国の反発は大きな障害になる。別の当局者によると退避する職員は約200人。

 バシル大統領の逮捕状請求は、ダルフール紛争の残虐行為に関与した容疑者の訴追を求める国連安保理決議に基づくもの。国連はICCによる大統領の訴追によって、自らの平和維持活動に支障をきたす格好になった。

 スーダン政府が大統領への逮捕状請求について「政治的動機に基づく犯罪的行為」(モハマド国連大使)と批判を強める中、潘基文(バンギムン)国連事務総長は「(スーダン政府が)引き続き国連と協力し、国連職員などの安全義務を期待する」と、UNAMIDの活動に影響が出ないよう要請。AU議長国タンザニアは逮捕状について「ダルフール問題が整理されるまで保留すべきだ」と表明している。国連はダルフールで約2万6000人のUNAMIDを展開しているが、今月8日にも車列が武装集団に急襲され、死者が出るなど不安定な状況が続いている。

 スーダンはICCに加盟しておらず、バシル大統領は「ICCの権限は非加盟国に及ばない」と反発。ICCは今後の予審法廷で逮捕状を発行するかどうか決めるが、逮捕状が出てもスーダン政府が大統領を引き渡す可能性は低いとみられる。

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 ■ことば

 ◇ダルフール紛争
 スーダン西部ダルフール地方の開発の遅れに不満を抱く地元の黒人住民らが、アラブ系の政府に対し03年に武装蜂起。これまでに推定で20万人が死亡、200万人が難民となった。今年1月、UNAMIDがダルフール駐留を開始した。

毎日新聞 2008年7月16日 東京夕刊

http://mainichi.jp/select/world/news/20080716dde007030015000c.html