2008年7月9日水曜日

【洞爺湖サミット】議長国ニッポン正念場 “問題児”中国に存在感

【洞爺湖サミット】議長国ニッポン正念場 “問題児”中国に存在感
2008.7.7 23:38

このニュースのトピックス:サブプライムローン
 「姿が見えない」と英紙にこきおろされた日本主催の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)が7日開幕した。霧の中であれ、問題国はあたかも学園の「番長」のごとく、やけに姿が大きく見える。問題を起こさない子は目立たない。

 世界唯一の超大国米国はサブプライム危機、さらには投機資金の巣窟(そうくつ)となって原油や穀物価格を高騰させている。北朝鮮については、「テロ支援国家」指定解除まで打ち出した。日本は静かに振る舞う。金融面では超低金利政策を維持し、危ういドルを支え続けている。福田康夫首相は拉致問題でもブッシュ大統領の「忘れない」という発言を信じ、北朝鮮のウラン濃縮から受ける脅威にも声を荒らげることがない。

 9日の洞爺湖サミット拡大会合に胡錦濤国家主席が参加する中国の存在感はどうか。膨大な貿易黒字を稼ぎ、世界最大の温室効果ガスの排出国である。チベットの騒乱、スーダンのダルフール紛争では人権を抑圧。その中国が問題解決者として期待される。舞台は6月末、ノルウェー・オスロ。世界の紛争解決を話し合う国際会議「オスロ・フォーラム」には各国の政府高官、専門家、さらに英国などの閣僚、欧米の元政権トップなどが参加した。イラン、アフガニスタン、ダルフール、ミャンマーなどと、白熱した議論になったが、「アジアのパワーとしては中国一色で、日本という言葉さえ出てこなかった」(会議筋)。ミャンマーに関するセッションでは中国代表の発言に耳目が集まった半面、日本の対応についての質問はゼロ。日本が巨大な復興支援を引き受けているアフガニスタンに関する討議でも、日本という国名すら一度も言及されなかった。中国政府は3月にはオスロ・フォーラムのアジア版を主催したが、この会議は「日本では参加者が集まらない」との理由で北京が選ばれた。

 「問題大国なのに」と非難しても始まらない。株式市場の急落を受け、米国の年金基金は商品投機により高い利回りを上げ退職者を喜ばせる半面で、世界の大衆に石油価格高騰による生活苦と食糧危機を味わわせている。投機を鎮める「強いドル」を実現するためには、今や日本に代わって世界最大のドル資産を持つ中国が米国債を買い支えなければならない。
英仏両国が他の新興国と合わせ中国をサミットメンバーに加えようと今回のサミットに提案している。従来の主要国中心の国際協調だけでは政治も市場も分裂、自壊を始めた世界を救えないという、かつてない厳しい現実が背景にあり、反対するなら覚悟がいる。

 「自由と民主主義」という価値観を枕詞(まくらことば)にしてきた日本外交は今回のサミットでまさしく正念場を迎えたわけだが、今更「ワル」になりようがない。ならば開き直り、原油や穀物の投機抑制の緊急措置、拉致問題を含む人権抑圧の絶滅、中長期的には温室効果ガスの大幅削減で、愚直なまでに主導性を貫くしかない。(編集委員 田村秀男)
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/080707/fnc0807072340015-n3.htm