2008年6月18日水曜日

世界の難民、国内避難民数が2年連続増加

世界の難民、国内避難民数が2年連続増加

2008年 6月 17日

世界規模での調査によると、2007年末現在、国外に逃れ、難民となった人の数は1140万人、紛争や迫害によって国内避難民となった人の数は2600万人であり、家を追われたUNHCR の支援対象者が過去最高を記録した。

6月20日の「世界難民の日」に向けて、ロンドン訪問中のグテーレス国連難民高等弁務官は、「2001年から2005年の5年連続で難民の数が減少したにもかかわらず、この2年間で増加していることを憂慮する。我々は現在複雑に絡み合った世界規模の問題に直面しており、将来さらに多くの人が家を追われる可能性がある。世界中の紛争地で発生している数々の緊急事態、統治における不安要因、乏しい資源をめぐり、紛争が起こる可能性をはらむ気候変動に起因した環境破壊、貧困層を直撃し多くの地域で治安悪化を引き起こしている価格高騰など、問題は多岐にわたっている」と述べた。

150か国以上を対象に実施された統計によると、UNHCRの援助を受けている難民と国内避難民の数は2007年末までに250万人増加し、過去最高の2510万人を記録した。UNHCRが支援対象とする難民の数は2007年末には990万人から1140万人へと増加した。また、国際移動に関するモニタリング・センター(International Displacement Monitoring Center)によれば、紛争によって影響を受け、国内避難民となった人の数は2440万人から2600万人へと増加した。UNHCR が直接、間接的に保護や支援を行う国内避難民の数は現在、2006年の1280万人から1370万人へと増加している。今回発表された、UNHCRの報告書『グローバル・トレンド(Global Trends)』には無国籍者や庇護希望者、故郷へ帰還した難民、故郷へ帰還した国内避難民、この分類に当てはまらないが、UNHCRの支援対象者となる人々についても分類と分析を行っている。UNHCRの援助対象者は合計で3170万人となるが、この数には国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の支援対象となる460万人は含まれない。

『グローバル・トレンド』は、国境を越えて紛争や迫害を逃れた難民と、国内にとどまっているが家を追われて国内に逃れた国内避難民を識別している。UNHCRが活動を始めた1951年当初、UNHCRの任務は世界の難民問題の恒久的解決をめざすことに限られていた。しかし過去数十年間、増加を続ける紛争によって発生した国内避難民の支援も、他の国連機関と連携し、活動を拡大している。

『グローバル・トレンド』によれば、主にパキスタンとイラクに逃れた約300万人のアフガニスタン難民と、主にシリアとヨルダンに逃れた約200万人のイラク難民の合計は、2007年に世界各地でUNHCRの支援を受けた難民のほぼ半数を占めた。多くの難民が流出した国としては、コロンビア(55万2000人)、スーダン(52万3000人)、ソマリア(45万7000人)が挙げられる。また、2007年に難民の数が増加した背景にはイラク情勢の不安定さが大きな要因とされる。2007年に最も多く難民を受け入れた国はパキスタンであり、シリア、イラン、ドイツそしてヨルダンなどが続いた。

『グローバル・トレンド』は国内避難民については、世界23か国に合計1370万人がUNHCRの支援対象として存在すると概算し、コロンビアに300万人(コロンビア憲法裁判所推計)、イラクに240万人、コンゴ民主共和国に130万人、ウガンダに120万人、ソマリアに100万人がいるとしている。

イラクでは、宗派間の対立と、包括的な政治的解決の欠如が、国内避難民の2007年初めの180万人から年末の240万人への増加につながったと『グローバル・トレンド』は分析する。その他にも、アフガニスタン、中央アフリカ共和国、チャド、スリランカ、イエメンにて国内避難民の増加や、新たな問題発生が報告されている。

2007年の1年間で、世界154か国の政府、あるいはUNHCR 事務所へ庇護を求め、難民申請した数は約64万7200人にのぼり、2006年比で5パーセント増、過去4年間で初めての増加を記録している。『グローバル・トレンド』は増加の理由が主にヨーロッパ諸国へ庇護を求めたイラク難民の多さによるものとしている。国別で見れば、最も多くの庇護希望者を出した国は5万2000人のイラクであり、4万6100人のソマリア、3万6000人のエリトリア、2万3200人のコロンビア、2万1800人のロシア、2万1600人のエチオピア、2万700人のジンバブエが続く。庇護申請が最も多く提出された国は、アメリカ、南アフリカ、スウェーデン、フランス、イギリス、カナダそしてギリシャである。『グローバル・トレンド』は庇護国間に存在する難民認定率の違いに懸念を表明する一方で、多くの難民は、出身国と同地域にとどまることがほとんどであり、先進国へ庇護を申請することは少ないとする。

難民と国内避難民は増加しているが、『グローバル・トレンド』は悪いニュースばかりではない。

「UNHCRの目標は難民のために恒久的解決を見つけ出すことである。解決方法として、出身国への自発的帰還、庇護国への定着、または第三国定住などがある。2007年はこれら全ての分野において進展が見られたが、道のりはまだ長い」とグテーレス国連難民高等弁務官は語った。

UNHCRの自発的帰還プログラムにより、37万4000人がアフガニスタンへ、13万700人が南スーダンへ、6万人がコンゴ民主共和国へ、4万5400人がイラクへ、4万4400人がリベリアへ帰還し、合計でおよそ73万1000人が故郷へ戻ることができた。また、2007年には210万人の国内避難民も故郷へ帰還した。

第三国定住への事例照会は2007年に大きく増加し、UNHCRが受け入れ国へ提出した案件数は過去15年最高、そして昨年比83パーセント増の9万9000人であった。しかし、第三国への定住者は、世界の難民数の1パーセント以下にとどまっている。2007年末までに7万5300人の難民が14か国へ第三国定住を果たし、そのうち4万8300人がアメリカへ、1万1200人がカナダへ、9600人がオーストラリアへ、1800人がスウェーデンへ、1100人がノルウェーへ、740人がニュージーランドへ受け入れられた。出身国別では、主にミャンマー、ブルンジ、ソマリア、イラク、コンゴ民主共和国、アフガニスタンからの難民が多数を占める。

2007年は、無国籍者とみなされていた人のうち、およそ300万人が減少した年でもあった。ネパールにおける約260万人への市民権付与、バングラデッシュにおける市民権付与の結果とされている。しかし、未だ世界には1200万人の無国籍者がいると『グローバル・トレンド』は概算しているが、さらなるデータが必要とされている。

2007年『グローバル・トレンド』全文はwww.unhcr.orgで入手可能である。

以上

http://www.unhcr.or.jp/news/press/pr080617.html