2008年5月3日土曜日

北京五輪:聖火リレー 中国領内初、香港で 警官3000人厳戒、もみ合い排除

北京五輪:聖火リレー 中国領内初、香港で 警官3000人厳戒、もみ合い排除


 【香港・庄司哲也、北京・浦松丈二】北京五輪の聖火リレーが2日、中国領内として初めて香港で行われた。チベット政策をめぐり世界各地で激しい抗議行動にさらされた中国政府は、自国領内に戻ってきた聖火リレーを「民族団結」の象徴として演出する。「1国2制度」の香港で、民主化要求デモなど表現の自由がどこまで認められるかが焦点だ。

 聖火は同日午前10時半(日本時間午前11時半)、九竜地区の香港文化センターをスタート。約5時間半をかけて香港島中心部の湾仔(ワンチャイ)地区まで120人の走者がトーチをつなぐ。香港当局は警戒のため警察官約3000人を動員。中国の人権弾圧を非難する民主派団体は、「人権聖火リレー」と名付けたデモを行った。

 AP通信によると、リレーの支持者とチベット旗を掲げた学生らがもみ合いになり、警察当局が学生側を「保護」名目で排除する場面もあった。

 香港は北京五輪の馬術競技の開催地でもあり、全般的に歓迎ムードに包まれた。雨模様にもかかわらず、沿道には中国国旗と同じ赤い服を着た多数の香港市民が繰り出した。

 しかし、3月中旬のチベット暴動で噴き出した中央政府への不満を共有する住民も少なくない。このため、中国政府は住民感情を刺激しないようリレー運営や警備を地元当局に任せるなど、細心の注意を払ってきた。

 香港特別行政区政府は一方で、デンマークの人権活動家3人やチベット独立を支持するカナダ人4人の入境を拒否するなど、抗議の封じ込めにも動いた。スーダン・ダルフール問題で中国政府を非難し、北京五輪に反対する米女優ミア・ファローさんも講演のための香港入りが一時、危ぶまれた。

 香港返還(97年7月)とマカオ返還(99年12月)から10年前後が経過し、中国本土との一体化が進んできたのも事実だ。聖火リレーが1国2制度下で成功すれば、中国本土への求心力はさらに強まることになる。

 聖火リレーはマカオを経て、4日に中国本土の海南島三亜をスタートし、8月8日の五輪開幕日まで全国31の省、民族自治区、直轄市すべてを走る。

 3月24日にギリシャ・オリンピアで採火された聖火は同31日に北京に到着。リレーは4月2日にカザフスタンの最大都市アルマトイをスタートし、これまで19都市で行われた。

 ■ことば

 ◇1国2制度
 英国から中国への97年の香港返還後も、香港が従来通り資本主義体制を維持する制度。中英両国は84年、「返還後50年は社会・経済制度を変えない」とする共同宣言に調印した。外交と国防を除き、香港には高度の自治権が与えられている。

毎日新聞 2008年5月2日 東京夕刊

http://mainichi.jp/select/world/news/20080502dde001030030000c.html