2008年4月25日金曜日

五輪=米国選手団、北京大会の政治問題化には温度差

五輪=米国選手団、北京大会の政治問題化には温度差

2008年 04月 25日 12:30 JST

[シカゴ 23日 ロイター] 北京五輪にソフトボールの米国代表メンバーとして参加するジェシカ・メンドーサ(27)は、大会中にダルフール問題での中国政府の姿勢に抗議を表明する計画はあるかと聞かれ、複雑な表情を見せる。

 メンドーサは、米国の元スピードスケート選手ジョーイ・チークらが2年前に結成した「チーム・ダルフール」にも所属。ダルフール問題への意識を高めることを目的とするこの団体には、約300人が参加している。メンドーサは「考えたことはあるが、計画はしていない。第一の目標は、ほかの選手とそこで話をすることだ」と述べた。

 国際問題の専門家らによる推計では、ダルフールでは約5年前に始まった紛争で20万人前後が死亡し、250万人が避難生活を強いられており、そういった状況を米国政府は「虐殺」だとしている。

 中国は、スーダンの石油産業に多額の投資を行うと同時に、スーダンにとって最大の武器供給国。人権団体などからは、中国がダルフール紛争の解決に十分な努力を行っていないとの非難の声が上がっている。またチベット問題でも、中国は西側諸国から厳しい批判の声を浴びている。

 北京五輪を控えた米国代表チームのメディア向けイベントで、メンドーサやサッカー選手のアビー・ワンバックなど一部の選手は、ダルフール問題などに対する自身の考えを表明すべきか、スポーツと政治的問題は切り離すべきかという相反する価値観に挟まれ、ジレンマを抱えていたように見える。

 一方、ほかの一部選手からは、五輪の平和や協調の精神を乱したくないとの声も聞かれる。開催国である中国の感情を傷つけたり、チームメートのパフォーマンスの邪魔になったり、長時間のトレーニングの成果を犠牲にしたりするのは避けたいという気持ちもあるようだ。

 体操のシェイラ・ウォーリー(17)は「練習に心から集中している。私たちは若いし、あらゆる政治的な問題は、それを仕事とするほかの人に任せる」と語った。

 8月の北京五輪開催に向け、このところの新聞紙面では、親チベット派の活動家らによる聖火リレーの妨害行為が大きく取り上げられている。

 これまでにも、政治問題を理由とした五輪ボイコットはあったが、チベット問題に関心が高まるなかでの中国での開催により、五輪をめぐるさまざまな政治的思惑が強まっている。

 北京五輪開会式には世界の指導者は参加を見合わせるべきという意見も少なくない。米女優ミア・ファローは、ダルフールなどの紛争地域で1カ月間の「五輪停戦」を求めたが、国際オリンピック委員会(IOC)は「国の行動を指示する政治的な権限は(IOCには)ない」としている。

 米映画監督のスティーブン・スピルバーグは、ダルフール紛争に対する中国の政策を理由に、北京五輪での芸術顧問を辞退した。

 前述の「チーム・ダルフール」のチークは、スポットライトを浴びる一瞬のために人生を捧げてきた選手に重圧がかかるのは理解できるとした上で、注目を浴びるその瞬間こそ、一生に一度の主張のチャンスでもあると語る。

 40年前のメキシコ五輪では、米国のトミー・スミスとジョン・カルロスの2人が、男子200メートル走の表彰台で黒の手袋をはめた手を掲げ、人種差別への抗議を訴えた。

 一方、米国オリンピック委員会(USOC)のシェア最高経営責任者(CEO)は、選手が自身の考えを表明するのは自由だが、それは個人的に行われるべきもので、五輪憲章にも違反すべきではないと指摘。同憲章では五輪が行われるすべての場所において、いかなるデモや政治的、宗教的、人種的な主張はしてはならないとうたわれている。

(ロイター日本語ニュース 原文:Andrew Stern 翻訳:宮井伸明)

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