2008年4月7日月曜日

中国:チベット問題を抱えて巡る聖火

中国:チベット問題を抱えて巡る聖火
IPSJapan2008/04/06


中国政府は聖火リレーを「調和の旅」と位置づけ、河南省新鄭で黄帝を祭る儀式を利用。統一と調和の機運を盛り上げたいところだが、一方、チベット圧政に抗議する活動家たちは聖火のチベット通過を中止するよう五輪組織委員会に訴えている。チベット問題が北京五輪に及ぼす影響は?


【北京IPS=アントアネタ・ベツロヴァ、3月31日】

 北京五輪を控えて国家統一を強調したい中国政府。始祖と讃える黄帝の権威を借りる算段だ。

 31日には胡錦濤国家主席が出席し、北京の天安門広場で聖火歓迎式典が華々しく開催された。翌日には、リレーの出発地であるカザフスタンのアルマトイに向けて聖火は出発。20カ国を巡った後、聖火はチベット自治区で世界最高峰エベレストの登頂を目指す。

 中国政府は聖火リレーを「調和の旅」と位置づけ、河南省新鄭で4月8日に行われる黄帝を祭る儀式を利用。毎年、海外在住者が何千人も集う盛大な儀式を利用して統一と調和の機運を盛り上げたい。

 一方、チベット圧政に抗議する活動家たちはギリシャにおける聖火の採火式でも抗議行動を決行。聖火のチベット通過を中止するよう五輪組織委員会に訴えている。中国国営放送局(中国中央電視台: CCTV )は採火式の抗議活動などの場面をカット、国民の目に触れないようにしている。

 中国政府はチベット独立を目指す「ダライ・ラマ一派」が五輪を妨害し、中国の国際的地位を貶めようとしていると非難。新華社通信は聖火の到着を受け、ダライ・ラマ批判を一層強めた。

 しかし、ダライ・ラマは1951年に中国指導者が約束した自治権を確保したいだけとして、暴力を非難。チベット亡命政府代表者議会のカルマ・チョペル議長はローマで行われた会見で「チベット民族に対する純粋な抗議であることは明らか。中国政府はチベット人をテロリストと名指しすることで、弾圧を正当化している」と訴えた。

 人権活動家はチベット問題だけでなくダルフール、ビルマにおける中国政府の姿勢も批判しており、聖火が通過するロンドン、パリ、サンフランシスコなどにおいても抗議活動が行われる可能性がある。今までに国際社会から五輪ボイコットの声は上がっていないが、サルコジ仏大統領のように開会式欠席を示唆する指導者も出てきている。

 チベット問題が北京五輪に及ぼす影響について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=角田美波(Diplomatt)/ IPS Japan 武原真一

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北京IPSのアントアネタ・ベツロヴァより、チベット問題が北京五輪に及ぼす影響について報告したIPS記事。(IPS Japan武原真一)

中国政府は聖火リレーを「調和の旅」と位置づけ、河南省新鄭で4月8日に行われる黄帝を祭る儀式を利用。毎年、海外在住者が何千人も集う盛大な儀式を利用して統一と調和の機運を盛り上げたい。(IPS Japan武原真一)

http://www.news.janjan.jp/world/0804/0804054302/1.php