2008年3月19日水曜日

北京五輪、選手間にボイコットの動き チベット問題

北京五輪、選手間にボイコットの動き チベット問題
3月18日21時40分配信 産経新聞



大気汚染が深刻な北京市街(奈須稔撮影)

 【北京=川越一】中国西部チベット自治区ラサから中国各地に飛び火している僧侶らによる大規模騒乱により、台湾の最大野党、中国国民党の馬英九・次期総裁候補は18日、当選後、北京五輪ボイコットを排除しないとの声明を発表したが、選手の間でもボイコットを検討する動きが出始めている。中国の温家宝首相は同日の記者会見の中で、改めて五輪の政治問題化を牽制(けんせい)したものの、選手が抱く不安や嫌悪感を止めるのは容易ではない。
フランス通信(AFP)によると、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ副会長は、ドイツの週刊紙「ビルト日曜版」に対し、「何人ものスター選手は五輪のことを考えたときに不安を覚えている。中には棄権することを考えている選手もいる」と明かした。
 これまでもスーダン・ダルフール問題に絡み、欧米では中国政府の姿勢を非難する声が絶えなかったが、英国のブラウン首相やドイツのメルケル首相ら各国首脳は、北京五輪ボイコットを求める世論を抑えてきた。
 しかし、選手の間にはすでに不安が広がり始めている。五輪馬術の個人・団体で計4個の金メダルを獲得しているルドガー・ビアバウム(ドイツ)は、ビルト日曜版で紙上で「この状況下で中国で競技ができるのかどうか考えてきた」と告白。選手同士で北京五輪のボイコット問題について話し合っていることを明かした。
 また、やり投げ女子の欧州記録保持者で、昨夏の世界陸上大阪大会の銀メダリスト、クリスティーナ・オーバークフォル(ドイツ)も、「なぜ(IOCは)中国に五輪を与えたのか、ずっと自問自答している」と吐露。チベット自治区での騒乱発生以来、中国に対する印象が悪化しているという。
 17日付のイタリア紙レプブリカに掲載された世論調査では、回答者の96・1%が、北京五輪ボイコットを支持。複数の欧州メディアは、明確にボイコットを主張し始めている。中国の温首相は記者会見で、「彼ら(騒乱の首謀者)はただ五輪の破壊を扇動しようとしているだけだ」「われわれはまだ発展途上国であり、五輪開催準備にあたりあれやこれやの問題は避けられない」などと反論したが、自信たっぷりの表情や声のトーンの中にも不安がにじんでいた。
 スペイン通信は17日、大気汚染の影響を恐れてマラソン出場を回避する見通しの世界記録保持者、ハイレ・ゲブレシラシエ(エチオピア)が自身の決断に他の選手が追随する可能性を示唆した、と報じた。「食の安全」問題や大気汚染にチベット自治区の騒乱が加わったことで、北京五輪回避の動きが加速することが懸念される。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080318-00000988-san-spo