2008年2月24日日曜日

英皇太子は北京五輪開会式に出ない その真意とは?

英皇太子は北京五輪開会式に出ない その真意とは?


2月24日10時21分配信 産経新聞



フリー・チベット・キャンペーンのアン・ホームズ代表代行

 英オリンピック委員会(BOA)が、北京五輪の代表選手に「人権問題など政治的発言は慎む」との契約書に署名を求めるという方針を、批判を受けて即座に撤回した。人権団体、「フリー・チベット・キャンペーン」(本部・ロンドン)のアン・ホームズ代表代行は産経新聞と会見、「BOAの当初方針は恥ずべきことだが、批判しないことが対中ビジネスの対価なのだから驚かない。人権問題に関し発言の自由が認められない現状は不名誉な限り」と語った。(ロンドン 木村正人)

 --BOAの今回の対応についてどう思うか

 「米国など他の国々では、代表選手に発言や行動の自由が与えられている。結果的に規制方針は撤回されたものの、BOAが代表選手の発言を規制しようとしたことは、誠に恥ずべきことだ」

 --チャールズ英皇太子の個人秘書が「皇太子は北京五輪の開会式に出席しない」との返書を、「フリー・チベット・キャンペーン」に出しているという。その経緯は?

 「現在の駐英中国大使が、皇太子に北京五輪の開会式に出席するよう説得を試みる使命を帯びて接近している、と昨年末に英紙が報じた。皇太子はこれまで中国の人権問題に批判的で、チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世やチベットの人たちとの友情を長く保ってきた。記事に驚いて確認のため皇太子の御所に書簡を出した。その中で、駐英中国大使の“微笑作戦”に対するわれわれの関心を伝えた」

 --それに対する返書にはどう書かれていたか

 「皇太子は長らくチベットに関心を持ち、ダライ・ラマ14世と数回にわたって会談していることや、皇太子は北京五輪の開会式には出席しないことなどが書かれていた」

 --チャールズ皇太子の真意は何だったのか

 「返書には出席しない理由は書かれていなかった。チベット問題の理解者である皇太子が開会式に出席することになっていたら、中国の宣伝工作が勝利を収めることになっていた。賢明な皇太子はそれを自覚していたのだろう。皇太子の気持ちを代弁するわけにはいかないが、皇太子が開会式に出席しないことが世界的論争を起こしたのは確かだ。中国政府は招待していないと言うだろう」

 --「フリー・チベット・キャンペーン」の北京五輪への取り組みは?


 「私たちは決して選手たちによる北京五輪ボイコットを呼びかけているわけではない。著名な公人が出席することで、中国が五輪開催の結果として、自由な社会に門戸を開いているという根拠のない説にお墨付きを与えることに、私たちは重大な関心を抱いている」

 --ブラウン英首相はこの1月下旬に、英実業家二十数人を引き連れて訪中し、貿易拡大など中国との商談を進めたが

 「首相に対しても訪中前に手紙を書き、他国の指導者が見せたのと同じ道義的な勇気を示すよう求めた。首相はしかし、中国で人権問題に公式には何も言及しなかった。このため、英紙は皇太子の信念に満ちた態度と比べて、『五輪で皇太子と首相が対立』と取り上げた。その後の投稿欄などを見ると、皇太子を支持する声の方が多かった」

 --ドイツのメルケル首相はダライ・ラマ14世と会談しているのだが

 「中国はメルケル首相に抗議したが、メルケル首相は誰といつ会うかは自分で決めるとし、この信念は撤回できないと回答した。首脳がダライ・ラマ14世と会談したドイツ、米国、オーストラリアなどの国で対中貿易に悪影響は出ていない」

 --他国の王室の北京五輪への対応はどうか

 「デンマークやノルウェーは、北京五輪の代表選手が競技しているときに皇太子らが出席するのが適当だと考えている。英王室の中でも、BOAのメンバーであり、娘が乗馬の代表選手として北京五輪に出場するアン王女は出席する予定だ」

 --ダライ・ラマ14世の予定は

 「5月に訪英する。英指導者が中国を喜ばそうと懸命に努力し、中国の人権問題に完全に目をつぶることに困惑している。ブラウン首相がダライ・ラマ14世と面会するよう強く働きかけたい」

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 ■北京五輪の英代表選手発言規制問題

 2月10日付の英大衆日曜紙メール・オン・サンデーが、BOAは北京五輪の代表選手に「人権問題などの政治的な発言は慎む」と記された契約書に署名を求める方針だと報じた。発言規制は英国の五輪参加史上初めてといわれ、「1938年にベルリンでサッカーのイングランド代表がナチスに敬礼した悪夢を思い起こさせる」(同紙)などと猛烈な批判を浴び、BOAは即座に撤回した。

 同紙によると、米国やカナダ、フィンランド、オーストラリアが代表選手に発言の自由を保証しているのに対し、ニュージーランドやベルギーは政治的発言を禁止した。
 一方、中国からの報道によると、ブラウン英首相は2月19日、中国の温家宝首相と電話会談し、スーダンのダルフール問題解決のため中国が行ってきた努力を絶賛し、北京五輪をボイコットする動きに反対すると表明したと伝えられている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080224-00000904-san-int