中国人油田作業員9人、スーダンで誘拐
モガデシュ(AP) 北アフリカのスーダン南西部にある油田で働いている中国人作業員9人が18日、何者かに誘拐された。中国系油田への攻撃はここ1年で3件目だが、中国人作業員が誘拐されたのは今回が初めて。
現場は西部ダルフール地方に隣接し、スーダン石油産業の中心地であるコルドファン地方アビエイ近郊。同地方ヘグリグでは中国資本の油田が稼動している。
中国の駐スーダン大使は、事件に関する情報がほとんどないものの、作業員らの発見に全力を尽くす意向を表明した。別の外交官は匿名を条件に、作業員らが車に乗っているところを拉致されたと述べ、現場から逃げて当局に通報した作業員らがいたことを明らかにした。
アビエイ当局者は、ダルフール地方の反政府勢力「正義と平等運動」(JEM)による犯行の可能性を指摘し、犯行グループが作業員らの車2台に放火したと語った。スーダン人運転手は現場から逃げたという。当局者は、実行犯らが警察部隊に対して同様の攻撃を繰り返していると指摘し、 現地で操業する企業への脅迫行為だと非難した。
ただし反政府勢力からの犯行声明は出ていない。JEMのスポークスマンはロンドン市内で、今回の誘拐事件について司令官からの報告はないと述べる一方、現場一帯に戦闘員を展開していることを認めた。スポークスマンは、JEMの目的が誘拐ではなく「中国人のかく乱」だとしている。
反政府勢力は、アジアからスーダン石油部門への大型投資が、ダルフール紛争で政府軍の戦費になっていると主張し、同地方近郊にある中国の投資先を標的にしている。JEMは昨年10月、コルドファンの中国系油田を襲撃して外国人労働者2人を誘拐し、2カ月後には別の中国系油田がある地区の軍駐屯地を襲撃した。
別の反政府勢力「スーダン解放軍」(SLA)は今年8月、政府軍の北ダルフール攻撃が、中国による新たな石油探査事業を促進する動機に基いているとの見解を示し、中国企業を「軍事標的」にすると明言した。
国際人権団体や人道活動家らは、ダルフール紛争を悪化させているとして、中国とスーダンの緊密な関係に一層厳しい目を向けている。中国はスーダン産石油の3分の2前後を購入し、その総額はスーダンの輸出総額の70%を占める。中国政府がスーダン政府に、ダルフール紛争で使用されている小火器も提供しているとの指摘もある。
中国はダルフール地方に、技術者や国連平和維持部隊など140人を駐留させている。また、スーダン政府は中国の派遣部隊を受け入れる一方、アフリカ諸国ではないとの理由で他国の部隊を排除した。
http://www.cnn.co.jp/world/CNN200810200008.html